調停離婚とは?申立ての流れや費用、有利に進めるためのポイントを解説
離婚の方法の1つである「調停離婚」は、裁判所の調停手続を利用して離婚することです。
そのため、「どんな手続なんだろう?」、「自分だけでできるのかな?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこでこのページでは、調停離婚とはどのような手続による離婚かに加え、離婚調停のメリット・デメリット、手続に必要な書類・費用・期間、手続の流れやポイントなどについて解説します。
離婚調停をスムーズに進めるためにも、理解を深めていきましょう。
目次
このページでわかること
- 調停離婚とは何か
- 離婚調停を行うメリット・デメリット
- 離婚調停を有利に進めるためのポイント
調停離婚とは?
調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続(夫婦関係調整調停)を利用して話し合い、離婚することです。
調停委員(男女1名ずつの場合が多い)と呼ばれる人が中心となって夫婦双方の話を聞き、離婚の合意や財産分与などの離婚条件について調整を行ってくれます。
夫婦間で話合いをしたものの、離婚について合意できない場合や、配偶者が話合い自体に応じない場合に、調停による離婚を目指します。
裁判離婚との違い
調停離婚と裁判離婚は、裁判所の手続を利用した離婚であることは同じですが、以下のような違いがあります。
調停離婚 | 裁判離婚 | |
---|---|---|
解決方法 | 話合い | 和解成立(話合い)または判決(裁判所の判断) |
進行役 | 調停委員 | 裁判官 |
法定離婚事由の必要性 | 不要 | 必要 |
有責配偶者による調停申立て・訴訟提起 | 可 | 可(ただし原則として有責配偶者からの離婚請求は認められない) |
不服申立て | 不可 ※調停に代わる審判の場合は可 |
和解成立の場合は不可 判決が下された場合は可 |
離婚時に作成される書面 | 調停調書 | 和解調書または判決書 |
調停離婚は、「話合い」で離婚成立を目指します。そのため裁判に比べ柔軟な解決ができますが、話合いがまとまらなければ離婚できません。
一方、裁判離婚では、離婚裁判中に「話合いで離婚の合意に至る(和解離婚)」、または「裁判所の判断が下される(判決離婚)」ことにより、離婚の成立・不成立が決まります。
なお、離婚裁判をする際は、必ずその前に離婚調停を経なければなりません。これを、「調停前置主義」といいます。
離婚調停で話し合う内容
離婚調停では、以下の内容について話し合います。
このように、離婚する・しないだけではなく、離婚する際に決める必要がある条件についてもあわせて話し合うことが可能です。
なお、婚姻費用分担請求調停を申し立てたケースで、離婚調停と併合された場合には、婚姻費用についても同じ期日で話し合うことになります。
離婚調停を行うメリット・デメリット
離婚調停にはメリットがある反面、デメリットもあります。以下で詳しく解説します。
離婚調停を行うメリット
離婚調停の大きなメリットは、冷静かつスムーズに話合いを進められることです。
離婚調停では、裁判官や調停委員を介して話合いを行います。
調停委員による聴き取りは原則として夫婦別々に行われるため、お互いが感情的になることなく、スムーズに話合いが進む可能性が高いです。
夫婦の一方にDVやモラハラがある場合にも、対等に主張を行うことができるでしょう。
離婚調停を行うデメリット
離婚調停のデメリットは、時間と労力がかかることです。
原則として、調停期日には本人が裁判所に行く必要があります。1回の期日で離婚が成立するケースは少なく、合意まで何度も裁判所に足を運ばなければなりません。
調停期日は平日に開かれるため、仕事などに影響が出る場合もあるでしょう。
また、調停はあくまで話合いで解決を目指す手続であるため、条件などで合意できない場合は不成立になります。つまり、時間と労力をかけても、調停で解決できない場合もあるということです。
離婚調停を行ったほうがよいケース
このように、離婚調停にはメリットだけではなくデメリットもあります。
しかし、以下のようなケースでは、離婚調停を申し立てたほうがよいでしょう。
- 配偶者が話合いに応じない
- DVなどがあり夫婦間での話合いが難しい
- 離婚条件について合意できない
このように、夫婦間の話合いで解決することが難しい場合には、早めに調停を申し立てることでスムーズに離婚できる可能性があります。
離婚調停を申し立てる前に知っておきたいこと
実際に離婚調停を申し立てる前に、必要書類や費用について知っておきましょう。
離婚調停の必要書類
離婚調停の申立てに必要な主な書類は、以下のとおりです。
書類 | 必要性 | 入手場所 |
---|---|---|
申立書 | 必ず | 裁判所ホームページ |
申立書の写し1通 | 必ず | |
夫婦の戸籍謄本 (全部事項証明書) |
必ず | 市町村役場 |
事情説明書 | 裁判所による | 裁判所ホームページ |
連絡先等の届出書 | 裁判所による | 裁判所ホームページ |
進行に関する照会回答書 | 裁判所による | 裁判所ホームページ |
年金分割のための情報通知書 | 年金分割を希望する場合 | 年金事務所など |
なお、申立書の写しは2通用意したうえで、相手方用の1通を提出し、もう1通は申立人用控えとしてご自身で保管しておきましょう。
またこのほかにも、話し合う内容に応じて以下の資料の提出が求められる場合があります。
資料 | 必要なケース |
---|---|
夫婦の財産がわかる資料 (不動産登記事項証明書、固定資産評価額証明書、通帳の写しなど) |
財産分与を希望する場合 |
収入がわかる資料 (源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書など) |
養育費の請求を希望する場合 |
不法行為の事実がわかる資料 (不貞行為、DV・モラハラの証拠など) |
慰謝料請求を希望する場合 |
これらの資料は、申立時に必ず添付しなければならないものではありませんが、あらかじめ提出しておくとスムーズです。
必要書類について詳しくは、調停を申し立てる家庭裁判所のホームページなどをご確認ください。
離婚調停にかかる費用
離婚調停を申し立てる際にかかる主な費用は、以下のとおりです。
費用の項目 | 金額 |
---|---|
収入印紙代 | 1,200円 |
切手代 | 1,000円程度(裁判所によって異なる) |
夫婦の戸籍謄本の取得費用 | 450円 |
このほか、必要書類の取得費用や調停調書の交付手数料、その他交通費などの実費がかかります。基本的に、これらの費用を支払うのは調停の申立人です。
また、離婚調停を弁護士に依頼する場合は、相談料や着手金、報酬金など弁護士費用を支払う必要があります。
離婚調停の流れ
離婚調停の申立てから終了までは、以下のような流れで進みます。
離婚調停の流れ
以下で詳しく見ていきましょう。
①家庭裁判所への申立て
夫婦のうち「離婚したい」という意思のあるほうが、家庭裁判所に調停を申し立てます。
一般的には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てますが、夫婦間で合意できれば、ほかの家庭裁判所に申し立てることも可能です。
必要書類を裁判所に持参または郵送で提出し、申し立てましょう。
申立てが受理されると、約2週間で第1回期日を知らせる調停期日通知書(呼出状)が郵送で届きます。第1回期日は、申立てから約1ヵ月後に指定されることが多いです。
②調停期日
調停期日には、調停委員が夫と妻からそれぞれ話を聞き、意見の調整を試みます。
この際、あなたの言い分を裏付ける資料や証拠の提出が求められる場合もあるため、準備しておきましょう。
1回の調停期日は約2時間で、およそ30分ずつ、夫婦交互に話を聞くことが多いようです。
調停では夫婦が顔を合わせないよう、それぞれ別の待合室に待機し、別々に調停室に入るなどの配慮がなされています。鉢合せを防止するため、調停の開始・終了時間をずらしてもらえる場合もあります。
なお、1回で解決に至るケースは少なく、調停期日は月1回程度のペースで複数回開かれることが一般的です。必要に応じて、およそ1ヵ月~1ヵ月半後に次回の期日が設けられます。
③調停の終了
合意に至った場合は調停が成立し、調停調書が作成されます。
調停が成立してから10日以内に、離婚届と調停調書謄本を市区町村役場に提出しましょう。調停が成立しても離婚届を提出しないままだと、戸籍上は離婚したことになりません。
合意に至らない場合や、配偶者が調停に出席せず話合いができなかった場合などには、調停は不成立となるため、離婚裁判を提起することになります。
なお、申立人が申立てを取下げた場合も、その時点で調停は終了します。
離婚調停にかかる期間
調停の申立てから終了までにかかる期間は、それぞれの事情によるため一概にはいえません。
ただし、令和4年度の司法統計によると、婚姻関係事件における調停の審理期間は、約3ヵ月~1年であることが多いようです。
婚姻関係事件における調停の審理期間
※上記グラフは、『司法統計年報(家事編) 第16表「婚姻関係事件数 終局区分別審理期間及び実施期日回数別』のうち、調停に関するデータに基づき、当事務所が独自に作成したものです。
6ヵ月以内が全体の58%、1年以内では全体の88%であり、ほとんどのケースで1年以内に調停が終了していることがわかります。
離婚調停を有利に進めるための6つのポイント
離婚調停を有利に進めるためには、以下の6つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 主張を書面にまとめておく
- 事前に話す練習をしておく
- 証拠を集めておく
- 法定離婚事由を主張する
- 調停委員に悪印象を与えないように配慮する
- 弁護士に依頼する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
主張を書面にまとめておく
離婚調停の際には、あなたの言い分を調停委員に説明する必要があります。
口頭では伝えきれない可能性もあるため、離婚を考えた経緯や、希望する離婚条件について事前に書面にまとめておきましょう。
この際、夫婦間で起きた出来事を時系列順に整理しておくと、筋道を立てて主張を組み立てるのに役立ちます。
事前に話す練習をしておく
実際に離婚調停の場で説明しようとすると、緊張してうまく話せないことも多いです。そのため、調停期日までに、主張がわかりやすく伝わるよう話す練習をしておくとよいでしょう。
家族や友人などに聞いてもらい、アドバイスをもらうのもおすすめです。
証拠を集めておく
たとえば、配偶者に浮気・不倫やDV・モラハラなどの不法行為があった場合、慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、慰謝料請求が認められるためには、事実を客観的に証明しなければなりません。
そのため、浮気・不倫やDV・モラハラがあったとわかるメールやSNS、通話記録、動画・写真など、証拠になり得るものを確保しておきましょう。
なお、慰謝料を請求する場合、裁判上妥当とされている金額を調べておくことも大切です。
詳しくは、以下のページも参考にしてみてください。
法定離婚事由を主張する
離婚調停では、離婚するのに法定離婚事由は必要ありません。しかし、裁判で離婚が認められる法定離婚事由があれば、調停においても有利に働く可能性があります。
そのため、以下のような「法定離婚事由」がある場合は調停で主張するとよいでしょう。
- 浮気・不倫(不貞行為)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
詳しくは、以下のページも参考にしてみてください。
調停委員に悪印象を与えないように配慮する
調停委員は中立の立場ですが、悪印象を与えないに越したことはありません。
離婚調停当日は、身だしなみを整えるほか、遅刻したり、調停委員に対し失礼な態度をとったりしないよう注意しましょう。
服装に決まりはありませんが、清潔感のある常識的な服装を心がけてください。
弁護士に依頼する
離婚調停の場で筋道を立てて適切に主張をするのは、簡単ではありません。なかには、主張すべきではないこともあります。
しかし、弁護士であれば、法的な知識を駆使して適切に主張できるため、離婚調停を有利に進められることが期待できるでしょう。
また、弁護士に依頼すると以下の対応もしてもらえるため、時間的・精神的負担も軽減されます。
- 裁判所に提出する書面を作成してもらえる
- 証拠集めのアドバイスをもらえる
- 調停への同席・代理出席をしてもらえる(※)
一人で離婚調停を進めることもできますが、ご自身で対応することに少しでも不安があれば、弁護士へ依頼することも検討してみてください。
※電話会議による同席の場合もあります。
離婚調停の注意点
離婚調停では、調停委員が間に入ってくれるものの、うまく意見を主張できないと不利な条件で調停が成立してしまうことがあります。
しかし、調停が成立してしまうと、あとから不服を申し立てることはできません。
そのため、配偶者の主張を安易に受け入れず、どうしても納得できないことや疑問が少しでもあれば、必ず調停が成立する前に徹底的に話し合うことが大切です。
離婚調停のよくある質問
離婚調停について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。
離婚調停中にしてはいけないことはありますか?
離婚調停中にしてはいけないことは、以下のとおりです。
- 無断欠席
- 調停の録音・撮影
- 虚偽の主張・証拠の偽造
- 不貞行為
- 子どもの連れ去り
- 配偶者への強引な接触・嫌がらせ
離婚調停で不利になる発言はありますか?
以下のような発言をすると、あなたが不利な立場になってしまうおそれがあります。
- 配偶者の悪口を言う
- 過去の発言と矛盾した主張をする
- 曖昧な主張をする
- 希望の条件をまったく譲らない
- 配偶者と直接交渉を行う意思を示す
- ほかの異性との交際などをほのめかす
離婚調停を有利に進めるためにも、このような発言は避けましょう。
離婚調停中に別居できますか?
別居すること自体は可能です。
ただし、新たに婚姻費用の分担や子どもの引き渡し・面会交流などの交渉が必要になる場合があります。
なお、配偶者の承諾を得ず一方的に別居することはやめましょう。
「夫婦の協力・扶助の義務(同居義務)を怠った」として「悪意の遺棄」と判断され、慰謝料を請求されてしまうおそれがあるためです。
離婚調停を進めるのが不安なら、弁護士にご相談を
離婚調停は、調停委員を介して「話合い」をすることで離婚の成立や条件の取決めを目指す裁判所を利用した手続です。より冷静に話合いを進められるため、夫婦だけで解決が難しい場合には、調停を申し立てることも検討するとよいでしょう。
離婚調停は自分で行うこともできますが、主張の整理や証拠集め、書面の準備などに時間や労力がかかります。また、配偶者に納得してもらえるよう主張をするのが難しい場合もあります。
そのため、少しでも不安があれば、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士なら、あなたの代わりに書面の作成や調停での適切な主張などができるため、よりスムーズな解決を目指せます。
アディーレ法律事務所では、離婚専属チームがご相談を承っております。これまでにさまざまな離婚問題を解決してきたノウハウを生かし、解決へ向けてサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。