離婚用語集

か行 | 離婚用語集

か行の用語

回復不可能な精神病 [かいふくふかのうなせいしんびょう]

回復不可能な強度の精神病とは、配偶者の精神障害の程度が、夫婦互いの協力扶助義務(民法第750条)を十分に果たし得ない程度に達し、回復の見込みがない場合をいいます。配偶者に回復不可能な強度の精神病があることは、離婚原因の一つになります(民法第770条1項4号)。

もっとも、回復不可能な強度の精神病があったからといって必ずしも離婚できるわけではなく、さまざまな事情を考慮して離婚の可否が判断されます。精神病に罹患している配偶者の離婚後の療養・生活にある程度の目途が立っているといった事情がないと離婚が成立しにくい傾向にあります。

家事事件 [かじじけん]

離婚や相続といった、家庭内・親族間の紛争など、家庭に関する事件をいいます。一般の「民事事件」や「刑事事件」と区別されるものです。家事事件は、ナイーブな親族間の感情的な対立があるため、法律的な観点のみならず、相互の心理的・感情的な観点から事件を解決することが求められます。また、家事事件においては、その性質上、個人のプライバシーへの配慮や、裁判所の後見的な関与が求められます。

家事事件一般については、家庭裁判所が、それにふさわしい手続を用意し、家庭や親族の間で起きたいろいろな問題を円満に解決すべく、後見的な見地から、具体的妥当性を図りながら処理する仕組みとなっています。家事事件には、審判事件および調停事件などが用意されており、家事事件特有の履行勧告手続などのような付随手続も用意されています。

家事審判官 [かじしんぱんかん]

家事審判を行う権限を持った家庭裁判所の裁判官のことをいいます。家事審判手続において、裁判官は「家事審判官」という名前で呼ばれます。

家事審判官は審判の当事者への聴取や、当事者から提出された証拠の調査などをします。必要に応じて家庭裁判所調査官や参与員の報告・意見を参考にして、審判をします。

家庭裁判所 [かていさいばんしょ]

離婚や親子関係など家庭に関する事件の調停や少年事件などを主に担当する裁判所のことです。略して「家裁」(かさい)とも呼ばれます。

離婚に関する調停、審判、訴訟は、通常の地方裁判所や簡易裁判所ではなく、この家庭裁判所で行われることになります。家庭裁判所は、全国47都道府県と函館、旭川、釧路の計50ヵ所に設けられているほか、全国に支部、出張所があります。

家庭内暴力 [かていないぼうりょく]

DV(ドメスティック・バイオレンス)と同じ意味。詳しくはDVを参照してください。

仮差押え [かりさしおさえ]

仮差押えとは、金銭債権の執行を保全するために、裁判所が債務者の財産の処分を制限することをいいます。これは、訴訟で判決を取得して、強制執行するまでの間に財産が処分されたり、隠されたりすることを防止するための措置です。

たとえば、離婚をしたい妻が夫名義の自宅を離れて別居している場合、財産分与を話し合う前に、夫に自宅の不動産を処分されてしまうおそれがあります。このようなリスクを避けるために、不動産の仮差押えという財産の保全措置を取っておくことができるのです。

よく似たものに「差押え」がありますが、差押えは判決などの債務名義に基づいて行われるのに対して、仮差押えは債務名義を取得する前の段階において、権利があることについて一応の証明(疎明)することで認められるものです。詳しくは弁護士に相談してみてください。

仮差押命令 [かりさしおさえめいれい]

債務者に対して責任財産の処分や現状の変更を禁止する命令のことをいいます。
金銭の支払いを目的とする債権について、強制執行ができなくなるおそれがあるとき、または強制執行に著しい困難を生じるおそれがあるときに、裁判所から仮差押命令が出されます(民事保全法20条1項)。

ただし、仮差押命令の被保全債権(債権者が債務者に対し有する金銭債権)が存在しなかった場合、仮差押命令を受けることにより債務者に損害が発生する場合があります。そのため、裁判所は仮差押命令を出すにあたって債権者に担保を立てさせることがあります。

管轄 [かんかつ]

全国どこの裁判所に対してでも、調停・審判申立て、訴訟提起ができるわけではありません。事件に応じて、どの裁判所が裁判をできるのか法律上定められており、その定めを管轄といいます。

管轄外の裁判所に訴訟提起などをしても、管轄の裁判所へ事件を移されてしまいます。遠方の裁判所へ事件が移されると、裁判所へ出頭する際に思わぬ時間や費用がかかってしまう場合があります。

このように管轄は重要な問題ですので、弁護士に相談することをおすすめします。

監護権 [かんごけん]

子どもの心身の成長のために養育監護する権利義務のことをいいます。
本来は、親権のなかに監護権が含まれ、親権と監護権は一致することが望ましいといえますが、例外的に監護と親権を切り離して、監護権者と親権者を別個に決めることもできます。たとえば、母(監護権者)が子どもの養育監護をし、父(親権者)が子どもの財産管理をするという取決めを行うことも可能です。

親権者については、離婚時に定める必要がありますが、監護権者についてはこの限りではありません。そのため、子どもの監護が必要な限り、いつでも監護権者を決定するよう要求することができます。

以下の場合には監護権者を変更することも可能です。

  1. 子どもが親権者・監護権者に虐待されている
  2. 親権者・監護権者が養育に対する熱意をもっていない
  3. 子どもが親権者・監護権者の変更を望んでいる

親権者の変更については、必ず裁判所の手続において変更しなければなりませんが、監護権者の変更については話合いで変更することが可能です。親権者・監護権者の変更は、子どもに対する福祉の観点から、慎重に検討されるべきことになります。

監護権者 [かんごけんしゃ]

監護権を有する者、すなわち主として子どもの心身の成長のための教育・養育をする権利を持つ者のことをいいます。

監護権は本来親権に含まれますので、通常親権者と監護権者は一致しますが、親権者と監護権者とを別々に定めることもできます。

親権者と監護権者を分けた場合、親権者は主に子どもの財産管理の権利を有し、監護権者は主に子どもの心身の成長のための教育・養護の権利を有することとなります。子どもの福祉に資するか、特に子どもの心身の成長のための教育・養護に資するか、という点を重視して、監護権者が指定されることとなります。

監護権者は父母の協議のみで指定することができ、協議がまとまらない場合は調停・審判で解決を図ることとなります。

監護権者の変更 [かんごけんしゃのへんこう]

一度決めた子どもの監護権者を変更することをいいます。監護権者については、親権者とは異なり、話合いによってこれを変更することができます。話合いによって決まらない場合には、監護権者変更の調停あるいは審判の申立てをする必要があります。

監護権者の変更が認められるためには、「子の利益のために必要があると認められること」という要件が必要となります。監護権とは、親の子どもに対する「権利」という側面よりも、子どもの養育を受ける権利を実現するための親の「義務」という意味合いが強く、監護権者の変更については、親の都合ではなく、子どもにとって誰を監護権者にするのが一番利益になるのかという観点から決定されます。

たとえば、監護権者が病気等により子どもの監護をすることができないといった事情がある場合には、監護権者の変更が認められる可能性がありますが、現在子どもが何の問題もなく平穏な生活を送っているのであれば、監護権者の変更が認められる可能性はかなり低くなるといえるでしょう。なぜなら、生活の環境を変えることは子どもに対して多大なる負担を与えることになり、監護権者の変更が子どもの利益のために必要であるとはいえないからです。

間接強制 [かんせつきょうせい]

「○○をしなければ、一日につき5万円を支払え」など、法律上果たすべき義務を果たさない場合に、一定の不利益を与えるという心理的な圧迫を与えることにより、義務者に義務を果たさせようとする制度のことをいいます。

間接強制は、以下の場合に利用することができます。

  1. 義務者のある一定の行為をすることが義務の目的となっている場合
  2. 義務者がある一定の行為をしないことが義務の目的となっている場合

1は、たとえば、子どもと面会交流させてもらえなかった場合が挙げられます。2の例としては、禁止されているにもかかわらず行われるストーカー等のつきまとい行為が挙げられます。

これに対して、金銭の支払いをすることが義務の目的となっている場合には、原則として間接強制の制度を利用できません。ただし、養育費については例外的に間接強制の制度を利用することができます。

間接強制は、心理的なプレッシャーを義務者に与え任意に支払いをさせる制度であるため、相手方の財産を把握している必要がなく、義務者の財産の所在が不明という場合に有効な手段です。ただし、義務者にまったく資力がない場合には、たとえ間接強制をしても意味がないため、間接強制の決定がされないこともあります。

企業年金 [きぎょうねんきん]

会社から社員に対して支給される年金のことをいいます。企業年金の歴史は、会社が社員の退職時に支払う退職金を分割で支払うという私的な制度からはじまりました。その後、国が企業年金を制度として認めるに至り、さまざまな企業年金の形が生まれる結果となりました。

離婚においては、企業年金が年金分割の対象となるのかという点に関心が集まるかと思いますが、財産分与で考慮されることはありますが、残念ながら年金分割の対象とはなりません。

偽装離婚 [ぎそうりこん]

今後も今までと同様に夫婦生活を送るつもりがあるにもかかわらず、離婚届を提出することをいいます。

偽装離婚はよく「無効である」といわれますが、「離婚する意思」とは「離婚届を提出する意思」のことを指すと考えられているため、たとえ離婚届提出後も今までと変わらない生活を送る意思を有していたとしても、離婚届を提出する意思さえあれば、その離婚は有効であると考えられています。

「生活保護を受けるため」、「借金を免れるため」など、偽装離婚にはさまざまな理由がありますが、一度離婚届を提出した以上、あとから離婚が無効であったと主張することはできません。
たとえば、事情があって離婚届を提出し、のちに復縁するつもりであったにもかかわらず、「一方が他人と結婚をしてしまった」、「一方が死亡してしまい相続することができなかった」などという場合、あとから「あのとき提出した離婚届は無効だから今でも婚姻関係が続いている」と主張することはできないのです。

協議離婚 [きょうぎりこん]

夫婦が話合いによって離婚することをいいます。話合いにより離婚する旨の合意が成立すれば、あとは離婚届を市区町村に提出するだけで離婚が成立します。親権者については離婚届に記載する必要がありますので、夫婦間に未成年の子どもがいる場合には、父母のどちらが親権者になるかについて、協議離婚の際に決定する必要があります。

協議離婚は、簡易迅速に離婚が成立する手続であるため、この手続により離婚するケースが大半を占めています。ただし、口約束のみで離婚してしまうと、財産分与慰謝料養育費・年金分割・面会交流等をめぐって、あとからトラブルが生じる可能性があります。

協議離婚にあたっては、のちのトラブルを防止するため、十分に話合いをして、決定した事項については公正証書を作成しておくとよいでしょう。協議内容や公正証書の内容については、本当はもっともらえるはずだった、不利な条件で合意してしまった、合意書の書き方が曖昧で法律的に意味がなかった、というトラブルが多発していますので、協議離婚をする際にも、弁護士へのご相談をおすすめします。

強制執行 [きょうせいしっこう]

強制執行とは、判決や調停調書などの債務名義に基づいて、相手(債務者)への請求権を裁判所が強制的に実現する手続をいいます。

強制執行の方法はさまざまなものがありますが、たとえば、相手の預金口座や給料を差し押さえて弁済を受けたり、動産や不動産などを差し押さえて売却し、その売却代金から弁済を受けたりすることが一般的です。詳しくは法律の専門家である弁護士に相談してみるとよいでしょう。

強制執行認諾条項 [きょうせいしっこうにんだくじょうこう]

公正証書に書かれた約束を守らなかった場合には、裁判を起こさなくてもただちに強制執行されても構いませんよ、という約定のことをいいます。

たとえば、離婚する際、公正証書の中で養育費の支払いについて、強制執行認諾条項を入れておけば、夫が約束どおりに養育費を支払わなかった場合には、裁判を起こすことなく、夫の給料を差し押さえる等の手段に出ることができるのです。

通常、約束を守らない相手方に対して強制執行をするためには、まず裁判等を起こして、判決等を取得する必要があります。

共同不法行為 [きょうどうふほうこうい]

2名以上の者が共同で不法行為を行うことをいいます。不法行為とは、わざとあるいは不注意により他人の権利や利益を侵害する行為のことをいいます。
夫が妻ではない女性と不倫をした場合、夫と不倫相手の女性は、ともに妻の婚姻共同生活の平和の維持という権利・利益を侵害する行為をしているため、妻に対して共同不法行為をしたことになります。

共同不法行為をした当事者である夫と不倫相手の女性は、連帯して妻に生じた損害を賠償する義務を負います。夫と不倫相手は「連帯」して義務を負うため、たとえば不倫により妻に生じた損害が300万円であった場合には、妻は夫と不倫相手のどちらに対しても300万円全額を請求することができます。夫と不倫相手は、自分の責任は半分しかないため、150万円しか支払う義務はないと主張することができません。

一方で、上の例で夫が300万円のうち200万円を妻に支払った場合には、妻は残りの100万円しか不倫相手に請求することはできませんし、全額である300万円支払った場合には、不倫相手には1円たりとも請求することができなくなる可能性があります。

共有財産 [きょうゆうざいさん]

夫婦が婚姻中に協力して築き上げた財産のことをいい、財産分与の対象となる財産のことをいいます。財産分与の対象となる共有財産かどうかについては、財産の名義によって判断するのではなく、婚姻中に協力して築き上げたものかどうかという観点から判断します。

たとえば、夫婦の婚姻中に不動産を取得した場合には、登記簿上、夫の単独名義になっていたとしても、夫婦の共有財産であり、財産分与の対象となります。そのため、妻は不動産について財産分与を受ける権利を有していることになります。

他方、婚姻する前から有している財産については、財産分与の対象とはなりません。また、婚姻中に取得した財産であっても、相続により取得した財産については、夫婦の協力により築き上げたものとはいえないため、原則として財産分与の対象となることはありません。

居所指定権 [きょしょしていけん]

親権監護権)の内容の一部であり、親権者(監護権者)が指定した場所を、子どもの居所として定めることのできる権利のことをいいます。

居所指定権が存在するからこそ、親権者(監護権者)は自分の居所を子どもの居所として指定することができ、その結果、親権者(監護権者)は子どもと同居することができるのです。

逆に親権者(監護権者)は自分の居所とは違う場所を子どもの居所として指定することもできますが、指定した場所が子どもの成長に悪影響をおよぼす場所であった場合には、居所指定権の濫用となります。また、自分と同じ居所を指定した場合であっても、親権者(監護権者)が子どもに対して虐待等の問題行為をしていた場合には、居所指定権を含む親権(監護権)がはく奪される可能性があります。

寄与度 [きよど]

一般的にもよく使用されている言葉ではありますが、離婚の際には、夫婦が婚姻中に築き上げた共有財産について、妻と夫がそれぞれどのくらい貢献したかという貢献度のことをさします。

現在の実務上では、夫婦が婚姻中に得た財産は、原則として夫婦の協力のもとで築き上げたもので寄与度は平等であるとされています。これは、いわゆる2分の1ルールといわれるもので、夫婦は婚姻中に築き上げた財産に対して、互いに2分の1の権利を持つことになります。

契約財産制 [けいやくざいさんせい]

夫婦財産契約制度のことです。婚姻前から所有している財産が夫・妻どちらの所有(もしくは夫婦の共有)とするか、婚姻中に夫婦で取得した財産を夫・妻どちらの所有(または夫婦共有)とするか、婚姻生活の費用をどちらがどれだけ負担するのか等の夫婦の財産関係について契約で定めることができる制度をいいます。

この夫婦財産契約は、婚姻届出前に締結しなければならず、婚姻後に夫婦財産契約を締結しても、無効となってしまいます(民法第755条)。また、婚姻前に夫婦財産契約を締結していていも、婚姻届出前までに夫婦財産契約を締結したことを登記しなければ、夫婦の相続人や第三者に対して夫婦財産契約の内容を主張することができません(民法第756条)。さらに、原則として婚姻届出後に契約の内容を変更することができません(民法第758条1項)。

以上のように制限が多く利用しづらいため、現在では夫婦財産契約はほとんど利用されていません。

公正証書 [こうせいしょうしょ]

公正証書とは、個人等からの依頼により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことをいいます。金銭の支払いを目的とする債権について、「約束どおり支払わない場合には強制執行を受けても異議はない」との条項(執行受諾文言)を入れて公正証書を作成しておけば、債務者が約束に違反して支払いをしなかった場合には、この公正証書に基づき相手の財産や給料などを差し押さえることができます。

通常、相手の財産や給料を差し押さえるためには、訴えを提起して判決を取るなどしなければならないため、そのような費用や時間がかかる手続を取らなくてよいという点で、公正証書を作成するメリットがあります。

離婚に関して、相手から養育費財産分与慰謝料として金銭の支払いをしてもらう約束をしても、約束が守られない場合が少なからずありますので、このような場合に備えて、離婚の際には公正証書を作成しておくとよいでしょう。

ただし、このような離婚に伴う慰謝料、養育費についての公正証書は相手の協力がなければ作成できないため、公正証書の作成について相手から同意を得ている必要があります。

言葉の暴力 [ことばのぼうりょく]

言葉の暴力とは、配偶者などに対して、言葉によって心理的な圧力を与える心理的暴力のことをいいます。

一般的にDV(ドメスティック・バイオレンス)は、殴る・蹴るといった直接的な暴力が振るわれるものと考えがちですが、配偶者に対して、汚い言葉を使ったり、また人格を否定するようなことを言った場合もDVとなり、離婚原因として認められる場合があります。

また、「殺すぞ」等の生命・身体等に直接的な危害を加えることを示唆する内容であった場合には、刑法における「脅迫罪」、それにより義務のないことを行わせた場合には「強要罪」にあたる可能性があり、刑事罰が科せられる場合もあります。さらに、言葉の暴力が原因で、PTSD等の傷害結果が生じた場合には、傷害罪に問われる可能性もあります。

言葉の暴力の場合にも、殴る・蹴るといった直接的な暴力と同様、配偶者暴力防止法(DV防止法)の保護が受けられ、裁判所から、被害者やその親族に対するつきまといや勤務先・自宅付近の徘徊を禁止する命令、被害者に対する面会要求や電話・メール等を禁止する命令などを出してもらうことができます。

婚姻 [こんいん]

男女が双方の合意に基づいて、婚姻届を提出し、法律上夫婦になることをいいます。双方の合意に基づいている必要があるため、一方が他方の同意を得ずに勝手に婚姻届を提出した場合には、婚姻は成立せずに無効となります。

また、婚姻届を提出する必要がありますので、たとえ今後夫婦として生活していく旨の双方の意思があったとしても、婚姻届を提出していなければ、婚姻が成立したとはいえません。婚姻届を提出していないけれど、実質的には、普通の夫婦と変わらない生活を送っている男女の関係については、内縁関係と呼ばれています。

婚姻準正 [こんいんじゅんせい]

法律上の婚姻関係にない男女の間で生まれた子ども(非嫡出子)について、のちに父親が認知し、さらに父母が婚姻することによって、その子が嫡出子(法律上の婚姻関係の間に生まれた子)の身分を取得することをいいます。

以前は、子どもが嫡出子か非嫡出子かによって相続分で区別されていましたが、法改正によって相続分の区別はなくなりました。

婚姻同意権 [こんいんどういけん]

未成年の子どもが結婚する場合には、父母の同意を得る必要があります。この場合の父母の同意する権限を婚姻同意権といいます。父母の一方が同意しない場合や、一方の親が行方不明または死亡している場合には、他の一方の親の同意のみで足りるとされています。

もし、父母の同意がない婚姻届が提出された場合、通常は受理されることはありませんが、誤って婚姻届が受理されてしまった場合でも、婚姻の取消原因とはされていません。そのため、婚姻関係は有効に成立してしまうことになります。

なお、成人(成年)年齢の引き下げを主な内容とする「民法の一部を改正する法律」が2022年4月1日に施行され、成人年齢は18歳に変更となりました。また、婚姻が可能になる年齢も、従来の男性18歳、女性16歳から、男女ともに18歳に変更されました。これらの改正により、男女ともに成人にならなければ婚姻できないことになったため、婚姻による成年擬制を規定していた民法第753条は削除されました。

もっとも、2022年4月1日現在で16歳以上18歳未満の女性は、経過措置により引き続き婚姻することができ、この場合の婚姻には、成年擬制の規定(改正前の民法第753条)がなお適用されます。

婚姻届 [こんいんとどけ]

婚姻(結婚)しようとする者が、婚姻を成立させるために行政機関に提出する届出書のことをいいます。つまり、結婚は婚姻届を提出することによって法律上の効果が認められることになります。そのため、結婚式を挙げたり、同居をしていたとしても法律上の「婚姻」は、婚姻届を出さない限り認められません。

なお、婚姻届を提出せずに、事実上、夫婦同様の生活を送っている場合には「内縁」と呼ばれ、婚姻に準じて扱われます。

婚姻による成年擬制 [こんいんによるせいねんぎせい]

未成年者は成年者になるまで、契約などの法律行為を自由に行う能力が認められていません。成年擬制とは、婚姻をすることで成年に達したものとみなす制度をいいます。これによって、契約などの法律行為は親権者の同意がなくても行うことができるようになります。

ただし、成年としてみなされるといっても、飲酒や喫煙をしてもいいことにはなりませんので注意してください。

なお、成人(成年)年齢の引き下げを主な内容とする「民法の一部を改正する法律」が2022年4月1日に施行され、成人年齢は18歳に変更となりました。また、婚姻が可能になる年齢も、従来の男性18歳、女性16歳から、男女ともに18歳に変更されました。これらの改正により、男女ともに成人にならなければ婚姻できないことになったため、婚姻による成年擬制を規定していた民法第753条は削除されました。

もっとも、2022年4月1日現在で16歳以上18歳未満の女性は、経過措置により引き続き婚姻することができ、この場合の婚姻には、成年擬制の規定(改正前の民法第753条)がなお適用されます。
婚姻の取消し [こんいんのとりけし]

婚姻の取消しとは、婚姻関係の成立後、何らかの取り消すべき事情により婚姻関係を消滅させることをいいます。

取り消すべき事情としては、重婚や近親婚、不適齢婚、再婚禁止期間の婚姻などが挙げられます。「重婚」とは、2人以上の者と重ねて婚姻する場合をいい、「近親婚」とは直系血族(親子など)や三親等内の傍系血族(甥や姪など)との結婚をいいます。「不適齢婚」とは、男女ともに18歳に満たない者が結婚することをいい(※1)、「再婚禁止期間の婚姻」とは、妊娠中の女性が婚姻解消または取消し後100日以内に再婚する場合をいいます(※2)。

※1 民法の改正により、婚姻が可能になる年齢が従来の男性18歳、女性16歳から、男女ともに18歳に変更となりました。もっとも、改正法の施行日である2022年4月1日現在で16歳以上18歳未満の女性は、経過措置により引き続き婚姻が可能です。

※2 女性の再婚禁止期間を離婚後6ヵ月から100日に短縮する改正民法が平成28年6月1日に成立しました。なお、女性が離婚時に妊娠していない場合や、離婚後、すでに出産をした場合は、離婚後100日以内でも再婚が認められます。

婚姻の無効 [こんいんのむこう]

婚姻の無効とは、婚姻の成立を否定すべき事情があるため、当初から婚姻関係が生じない場合をいいます。たとえば、婚姻する意思がないのに婚姻届を提出した場合や、そもそも婚姻届を提出していない場合などがあげられます。

婚姻が無効とされる場合には、婚姻による法律上の効果は一切生じませんので、二人の間に生まれた子どもは嫡出子とは認められません。

婚姻費用 [こんいんひよう]

婚姻費用とは、夫婦およびその未成熟子(経済的に独立していない子)を含む、婚姻生活を営むうえで必要な一切の費用(食費、住居費、医療費、娯楽費、交際費等)をいいます。

夫婦は互いに生活を助け合う義務があり、婚姻費用を分担する義務を負います。そのため、たとえ別居中でも婚姻が継続している場合には、婚姻費用は夫婦でともに負担することになります。

このため、別居していても、夫婦の一方が生活費に困っているような場合には、収入がある他方の者に対し、生活費の支払いを請求することができます。

具体的に請求できる生活費の額については、夫婦の資産や収入などの一切の事情を考慮して算定されます。合意ができない場合には、婚姻費用の算定については、裁判所が定める算定表(婚姻費用算定表)にしたがって算定していきます。

婚姻費用の支払いがどのくらい見込めるか知りたい方は、以下の「婚姻費用かんたん自動計算ツール」から、受取額の目安をチェックできます。

婚姻費用分担請求 [こんいんひようぶんたんせいきゅう]

婚姻費用分担請求とは、夫婦の住居や生活費、子どもの学費など、夫婦生活を継続するうえで必要となる費用(婚姻費用)が支払われない場合に、それを相手方に請求することをいいます。

夫婦は互いに扶助義務を負っており、婚姻費用を分担する義務があります。たとえ別居していたとしても、婚姻が継続している限りは、この義務から逃れることは原則としてできません。そのため、離婚成立までの期間の生活費などが相手方から支払われない場合には、相手方に対して婚姻費用を請求することができます。

婚姻費用の分担額については、まずは夫婦の協議によって決めることになりますが、協議で決まらなかった場合には、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停申立て」を行うことになります。さらに、そこでも話合いがまとまらない場合には、同じく家庭裁判所での審判を受けることとなります。

また、原則として、請求時(婚姻費用分担請求の調停申立て時)以降の婚姻費用しか請求することができず、過去の分を遡って請求することは困難ですので、注意が必要です。 なお、具体的に請求できる金額については、夫婦の資産や収入などの一切の事情を考慮して算定されますが、婚姻費用については、東京・大阪養育費等研究会が提案した算定表に基づき金額を算出することが、実務上定着しており、広く活用されています。

詳しくは以下のページをご覧ください。
裁判所ホームページ:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

婚姻を継続し難い重大な事由 [こんいんをけいぞくしがたいじゅうだいなじゆう]

婚姻を継続し難い重大な事由とは、民法が定める5つの離婚理由のうちの1つであり、婚姻が完全に破綻していることをいいます。婚姻が破綻しているといえるためには、夫婦の主観において婚姻を続ける意思を失っていること、および客観的に見て夫婦の共同生活が復活する見込みがないことが必要です。

婚姻を継続し難い重大な事由にあたるケースについては実にさまざまなものがあります。たとえば、性格の不一致を原因として長期間別居をしていた場合、暴力や虐待があった場合、過度な宗教活動があった場合、真面目に働かない場合、アルコール中毒である場合、性的不能・性的異常がある場合には、婚姻を継続しがい重大な事由にあたるとして、一方が離婚に応じない場合にも強制的に離婚をすることができる可能性があります。

婚氏 [こんし]

婚姻によって改めたを婚氏といいます。離婚する際には、原則として、旧姓に戻ります。ただし、離婚の日の翌日から3ヵ月以内に市区町村役所に届け出た場合は、婚氏を続称することができます。

通常、婚氏を続称する場合は、離婚届を提出する際に届け出をします。3ヵ月という期間を過ぎると、婚氏の続称には家庭裁判所の許可が必要となります。

なお、離婚すると原則として婚姻前の戸籍に戻りますが、婚氏続称の届け出をした場合は、新戸籍が編製されます。

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