弁護士コラム

親権問題は母親が有利?母親が親権を取れない条件とその理由

親権問題は母親が有利?母親が親権を取れない条件とその理由
  • 公開日:2023年12月08日
  • 更新日:2024年07月22日

子どものいる夫婦が離婚する際、どちらも親権を希望すれば、話し合いや調停などの方法で決めることになります。

母親が有利だといわれていますが、必ず獲得できるわけではありません。問題があり、親権者として不適格だと判断されたり、父親のほうがふさわしいと判断されたりするケースもあります。

そこで、親権を決める流れや親権が認められるケース、認められないケースについて解説します。このコラムを読んで、どうすれば親権を獲得できるのか理解を深めていきましょう。

この記事を読んでわかること

  1. 親権者を決めるまでの流れ
  2. 母親が親権を取れないケース
  3. 親権の獲得に、あまり影響しない母親の問題
  4. 調停や裁判で親権を決める3つのポイント

親権者が決まるまでの流れ

離婚する際に親権者を決める必要があるのは、18歳未満の子どもがいる場合です。子どもが成人していれば、親権者を決める必要はありません。

それでは親権を決める必要があるとき、どのような流れで決めていくのでしょうか。「夫婦間の話し合い」、「離婚調停」、「裁判」と、順番に説明します。

①夫婦間の話合いで決める

まずは、夫婦の話合いで親権者を決めます。

話合いにおいて大切なのが、自分たちの都合ではなく、「子の福祉(利益)」の観点から行うことです。

これまでどちらが愛情を持って養育に関わってきたのか、離婚後の子どもとの生活環境を整えられるのはどちらか、どうすれば子どもが幸せなのかを冷静に話すようにしましょう。

折り合いがつかず、調停や裁判で決める際にも、「子の福祉(利益)」はもっとも大切な考え方です。

夫婦間の話合いで決められれば、離婚届に親権者を記入して提出します。

協議離婚については、以下のページも参考にしてみてください。

協議離婚についてもっと詳しく見る

②離婚調停で決める

夫婦間で合意できない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員とともに親権を決めていくことになります。

調停はあくまで話合いによる解決を目指す場です。

調停委員が夫婦の間を取り持ち、専門知識・経験による助言や説得を交えて合意を目指します。まとまらなければ、数ヵ月にわたり、何度も話合いを繰り返していくことになります。

また注意しておきたいのが、基本的に調停や裁判では兄弟(姉妹)の親権を分けることが認められません。

これは兄弟(姉妹)は一緒に育ったほうが、子どもたちの利益が大きいという「きょうだい不分離の原則」の考え方があるためです。

こうした協議離婚との違いも把握したうえで、調停に臨むようにしましょう。

調停離婚の詳細は、以下のページも参考にしてみてください。

調停離婚についてもっと詳しく見る

③裁判によって決める

調停でも合意できなかった場合は、裁判によって親権を決めていくことになります。

裁判では夫婦双方が、自分のほうが親権者にふさわしいことを主張・立証し、さまざまな事実をもとに裁判官が判断を下します。

判断に不服があれば、2週間以内であれば、不服の申立ても可能です。

裁判離婚についての詳細は、以下のページも参考にしてみてください。

裁判離婚についてもっと詳しく見る

親権獲得では母親が有利?親権を取れないケースとは

一般的に親権の獲得は、母親が有利だとされています。

これは、幼い子どもは母親と暮らしたほうが望ましいという「母性優先の原則」の考え方からです。

ただし「母性優先の原則」は絶対的なものではありません。最近は共働きで父親が積極的に育児に関わることが増え、親権を勝ち取るケースも多くなってきました。

特に母親側に問題があれば、親権争いで不利になることもあります。具体的にどういった問題があると、親権を勝ち取れない可能性があるのか見ていきましょう。

子どもを虐待している

母親が子どもを虐待している事実があれば、親権が認められない可能性が高いです。虐待とは以下のような内容になります。

  • 身体的虐待
    殴る、蹴る、物を投げつける、家から閉め出すなど
  • 精神的虐待
    怒鳴りつける、人格否定をする、無視するなど
  • ネグレクト(育児放棄)
    食事を与えない、適切な医療を与えない、不衛生な環境に放置するなど

子どもと一緒に暮らしていない

調停や裁判における判断基準の一つに、「監護の継続性」があります。

これは離婚の手続までに、子どもの監護(監督・保護すること)を担っていたほうを親権者とすべきという考え方です。

そのため夫婦が別居し、母親が子どもと一緒に暮らしていなければ、親権者として父親の方が適任だと判断される可能性があります

特に母親が親権者になることで引っ越しや転校など、生活に変化が生じる場合、より母親側が不利になりやすい傾向にあるといえるでしょう。

父親が主に育児をしている

親権者を判断するうえで、これまでの監護の実績は非常に重視されます。

そのため一緒に暮らしていたとしても、食事の準備や寝かしつけ、保育園への送迎など、子どもの世話をほとんど父親が担っているケースは、親権が獲得できない可能性があります

健康状態が悪い

健康状態が悪く、子どもの世話が困難だと判断されれば、親権の獲得が難しくなります

たとえば、精神的・身体的に大きな病気を患っているケースです。

ただし、最低限の子育てができる程度の症状であれば、親権を獲得できる可能性はあります。

子どもが父親との暮らしを希望している

子どもの意思も、親権の判断に影響します。そのため、子どもが父親との暮らしを希望している場合は、親権争いで負けてしまう可能性があります

ただし、意思をどこまで反映するかは、子どもの年齢によって変わります。

たとえば調停や裁判において、9歳くらいまでは子どもの意思はあまり関係ありません。子どもが10歳ほどになってから、意思が判断に取り入れられるようになり、15歳以上からは基本的に子どもの意思が尊重されます。

親権者の決定に、あまり影響しない母親の問題

反対に、親権の判断にあまり影響しない問題もあります。代表的なものを見ていきましょう。

母親の不倫・浮気

離婚原因が母親の不倫・浮気にあっても、親権の判断にはあまり影響しません

これは前述したように、親権者を決める際に「子の福祉(利益)」がもっとも重要だと見なされるためです。夫婦間のトラブルと親権の判断は別問題であり、子どもとの関わりに影響がないのであれば、基本的には問題になりません。

ただし、不倫相手に会いに行くために子どもを家で一人にしているなど、悪影響を与えているようなケースでは、親権者としてふさわしくないと判断されることもあります。

子どもを育てられる収入がない

専業主婦で収入がないなど、現在の経済力は親権の判断にそれほど影響しません。

これは、離婚後の子どもの生活費を養育費や財産分与、公的扶助などでまかなえるなら、問題ないと考えられるためです。

ただし、あくまで養育費は子どもの生活に必要なお金であり、母親の生活までは保障されません。そのため、自分の生活資金がまかなえないことにより、子どもとの生活が危ぶまれる場合は、親権が獲得できないこともあります。

親権を決めるための3つのポイント

最後に、調停や裁判で親権を決める際のポイントについて紹介します。少しでも有利に進めるために、しっかりと確認しておきましょう。

監護の実績

これまでどちらが主に子どもの監護を担ってきたかは、重要な判断基準になります。基本的に、これまで主に担ってきたほうの親が、引き続き監護を担うべきだと考えられます

食事の準備や保育園の送迎など、子どもに必要なことをしてきたのであれば、アピールするといいでしょう。

離婚後の子育ての環境

過去の実績だけでなく、離婚後もしっかりと子育てできる環境が用意できるのかも判断基準となります

たとえば離婚前は専業主婦でも、離婚後は外に働きに出る方も多いです。そのため、実家の近くに引っ越して両親に預けられたり、安心して預けられる保育所を見つけておいたりと、育児のサポート体制を整えておくことも大切なポイントになります。

面会交流の寛容性

離婚したとしても、子どもにとってはどちらも親であることに変わりありません。そのため、親権者ではない親とも交流の機会を設け、良好な関係を保つことが子どもの成長に大切だと考えられています。

こうした面会交流に寛容であるかは、親権判断の一つのポイントです。そこまで大きく重視されない点ではありますが、できれば寛容な姿勢で臨んだほうがいいでしょう。

まとめ

親権を決める際は「子の福祉(利益)」が重要視されます。

そのため、母親だからという理由だけで必ずしも親権を獲得できるとは限りません。場合によっては、親権を獲得できないこともあります。

反対に、ご自身に問題があっても、子どもを大切に想い、これまで行動してきたのであれば、親権を獲得できる可能性はあります。調停や裁判では、そういったポイントをしっかりと説明するようにしましょう。

どうしたら親権を獲得できるのか、一人で悩んでいる方がいれば、弁護士に相談してみるのもおすすめです。離婚したい方がいれば、私たちアディーレ法律事務所も、親権をはじめ養育費など離婚条件を有利に取り決められるようにサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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