弁護士コラム

離婚前に別居すべき?メリット・デメリットや別居に必要な準備を解説

離婚前に別居すべき?メリット・デメリットや別居に必要な準備を解説
  • 公開日:2024年12月2日
  • 更新日:2024年12月02日

離婚を考えている方のなかには、「別居すべきか迷っている」という方も多いのではないでしょうか。
別居をすることで離婚が成立しやすくなる一方で、きちんと準備をしておかないと後悔することにもなりかねません。

そこでこのコラムでは、離婚前に別居をする必要性やメリット・デメリット、別居前にしておくべき準備や別居中のNG行動を解説します。
あなたにとってよりよい選択をするためにも、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を読んでわかること

  1. 離婚前に別居をする必要性
  2. 離婚前に別居するメリット・デメリット
  3. 別居する前後にやるべきこと

離婚前に別居は必要?離婚と別居の関係

離婚するために、別居は絶対に必要というわけではありません。
しかし、別居は離婚するために重要な事情になります。あなたに不倫などの有責行為があったケースを除き、一定期間、別居をすると、裁判において離婚が認められる可能性が高まるためです。

離婚原因として認められる別居とは

別居とは、一般的には夫婦が別々の家で暮らしている状態のことをいいます。
ただし、別居が離婚原因として認められるためには、以下のように「婚姻関係が破綻している」ことを示す実態が必要です。

  • 夫婦の関係が悪い
  • 夫婦が別の家に住んでいる
  • 夫婦の家計を別にしている

そのため、夫婦仲が悪いとはいえない状態で、単身赴任や介護などを理由に別々に暮らしているだけでは、別居を理由に裁判で離婚が認められることはありません。
一方で、単身赴任中に夫婦仲が悪くなったケースや、離婚を前提に同居を拒否し単身赴任することになったケースなどであれば、離婚が認められる可能性があります。

離婚前に別居すべきケース

以下のようなケースでは、別居を検討すべきでしょう。

  • 配偶者が離婚にまったく応じてくれない
  • 配偶者からDV・モラハラを受けている
  • 同居によって子どもに悪影響が出ている

特に、DVや虐待などの被害を受けている場合には、心身の安全を確保するためにすぐにでも別居を検討することをおすすめします。

離婚を成立させるのに必要な別居期間

離婚に必要な別居期間は状況によって異なりますが、3年以上になると裁判で離婚できる可能性がでてきます。

厚生労働省の統計によると、実際に別居を経て離婚した夫婦のほとんどは5年未満の別居期間で離婚が成立しているようです。

詳しくは以下のコラムでも解説していますので、参考にしてみてください。

離婚前に別居するメリット・デメリット

離婚前に別居することには、メリットもある反面、デメリットもあります。
別居すべきかどうか判断するために、以下のメリット・デメリットを正しく理解しておくことが大切です。

メリット

離婚前に別居する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 離婚を成立させやすくなる
  • 離婚の意思が固いことを伝えられる
  • 同居によるストレスから解放される

特に、「配偶者がまったく離婚に応じてくれない」という場合、別居期間を設けるメリットは大きいといえます。
ご自身や配偶者の気持ちを冷静に整理できるようになるため、話合いも進展しやすくなるはずです。

デメリット

一方で、離婚前の別居には、以下のようなデメリットもあります。

  • 関係修復が難しくなるケースもある
  • 同居と比べて経済的に苦しくなる
  • 離婚のための証拠集めが難しくなる

ただし、別居前にきちんと準備をしておけば、これらのデメリットが大きく影響することは少ないかもしれません。

離婚で不利になる別居のNG行為

自分から別居したいと切り出したからといって、それだけで離婚に不利に働くことはありません。
しかし、以下のような行為をしてしまうと離婚の際に不利になったり、責任を問われたりするおそれがあります。

一方的に別居する

法律上、夫婦には同居義務があり、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています(民法第752条)。
正当な理由もないのに配偶者の同意を得ず一方的に別居してしまうと、基本的には同居義務に違反したことになるため注意が必要です。

同居義務に違反したこと自体に罰則はありませんが、法定離婚事由のうち「悪意の遺棄」に該当すると判断された場合には、慰謝料を請求されるおそれもあります。

配偶者からDV・モラハラを受けているなどの事情がない場合には、同意を得たうえで別居するようにしましょう。

別居中に不倫する

離婚を前提に別居する場合でも、別居中に不倫(不貞行為)をしてはいけません。
たとえば、別居後すぐに不倫したケースなどでは、離婚の際に配偶者から慰謝料を請求されるおそれがあります。

一定期間別居を続けているケースでも、婚姻関係が破綻しているとまではいえず、配偶者に有責行為がなければ、ご自身が不倫したことによって離婚請求自体が認められなくなるおそれもあるでしょう。

子どもを連れ去る

親権を取り決める際、子どもと長く一緒に過ごしていることが有利な事情として考慮されることはあります。
ただし、ご自身や子どもがDV・虐待を受けているわけでもないのに、配偶者の同意なく子どもを連れて別居すると、法的責任を問われるおそれもあるため注意が必要です。

また、以下のようなケースでは、親権を取り決める際に不利になるおそれもあるでしょう。

  • 子どもの意思に反して連れ去ったケース
  • 今まで子どもの面倒を見ていなかったのに連れ出したケース

子どもを連れて別居したい場合には、事前に子どもの意思を確認したうえで、配偶者と話し合っておくことが大切です。

別居する前にしておくべき準備

別居をする際は、新生活に不都合が生じないようきちんと環境を整えておくことが大切です。また同時に、離婚に向けた準備も進める必要があります。
具体的には、以下のような準備をしておくとよいでしょう。

住まいを確保する

あなたが現在暮らしている家を出ていく場合には、住まいの確保が必要です。
仕事や収入などを考慮して、住まいを探しておきましょう。実家が近いのであれば、一時的に実家で暮らすという選択肢もあります。

なお、別居を経て離婚した際、そのまま住み続けることになる可能性もあるため、子どもの預け先や今後通う学校のことなども考えて住まいを決められるとベストです。

生活費を確保する

別居をする際は、引越しの費用や当面の生活費が必要になります。事前にある程度のお金を貯蓄しておけると安心です。
別居後は、婚姻費用の請求や公的支援の利用ができる場合もあります。以下で詳しく見ていきましょう。

婚姻費用の請求

婚姻費用とは、婚姻中の夫婦が生活するうえで必要な生活費のことです。
法律上、夫婦にはお互いに生活を助け合う義務があります。この義務は、法律上の夫婦である限り、別居してもなくなることはありません。

そのため、夫婦それぞれの負担能力(収入など)に応じて、婚姻費用分担請求をすることが可能です。

基本的には、収入の高いほうの配偶者に対し婚姻費用を請求することになります。ただし、未成熟の子どもがいるケースなどでは、子どもと暮らす親の収入のほうが高い場合でも婚姻費用を請求できる場合があります。

婚姻費用について詳しく見る

公的支援の利用

子どもがいる夫婦が別居する際、子どもと暮らすほうの親は、以下のような公的支援制度を利用できる可能性があります。

  • 児童手当
  • 児童扶養手当

手当を受給するためには要件があり、金額は子どもの人数や年齢によっても異なります。また、別居はしているものの離婚は成立しておらず、離婚協議中や離婚調停中である場合、これらの手当が受給できるかどうかは市区町村によって取扱いが異なることがあります。
そのため、お住まいの市区町村の窓口やホームページなどで事前に確認しておくとよいでしょう。

配偶者の収入を把握する

別居の際に請求できる婚姻費用や、離婚後に請求できる養育費は、夫婦それぞれの収入をもとに金額を算定します。
適正な金額を支払ってもらうために、配偶者の収入を把握しておきましょう。

収入は、たとえば以下のような資料で証明できます。

  • 給与明細
  • 源泉徴収票
  • 課税証明書 など

同居しているうちに、これらの資料をコピーしておくのがおすすめです。

夫婦の財産をリストアップする

離婚の際、財産分与を適正に行うためには、夫婦の共有財産を正確に把握しておく必要があります。

そのため、同居しているうちに夫婦の共有財産をリストアップしておきましょう。配偶者名義の財産に関する資料(預貯金通帳や保険証券など)のコピーを取っておくと安心です。

別居してからだと、財産を把握するのが難しくなりますし、配偶者に財産を隠されてしまうおそれもあります。

不倫などの証拠を集める

配偶者に不倫(不貞行為)やDVなどの行為があった場合、別居する前に証拠を確保しておきましょう。
証拠があれば、離婚が認められやすくなるだけでなく、慰謝料を支払ってもらえる可能性も高くなります。

なお、別居してから証拠を集めることができる場合もありますが、配偶者の行動や状況を把握しにくくなり、有効な証拠を確保するのが難しくなるため注意が必要です。

別居したあとやるべきこと

引越しをするのであれば、運転免許証の更新や選挙の投票、行政サービスを受けるのに支障を出さないためにも、住所変更を行いましょう。
離婚せず別居しているだけの状態であっても、夫婦別々に住民登録を行うことが可能です。

ただし、配偶者からDV・モラハラなどを受けていた場合には、別居後の住所を知られてしまうとトラブルに発展してしまいかねません。
そのため、DV等被害者支援措置を受ける手続を行うことも検討しましょう。

DV等被害者支援措置とは、DVや虐待などの被害者を保護するため、加害者に対して、住民票や戸籍の附票の写しの閲覧・取得を制限する制度です。

詳しい手続の方法は、お住まいの市区町村の窓口やホームページなどで確認できます。

離婚前の別居についてよくある質問

離婚前の別居について、お客さまからよく寄せられるご質問にお答えします。

別居と離婚はどちらが得ですか?

それぞれの状況やお気持ちによってさまざまであるため、一概にはいえません。

本当に離婚すべきか気持ちの整理が必要な場合には、まずは別居をするのも選択肢の一つになります。
一方で、離婚の意思が固く準備も整っているのであれば、離婚へ向けて話合いや手続を進めることで、一日も早く新たな生活をスタートさせられるでしょう。

具体的な婚姻費用や養育費、財産分与などの金額もふまえて考える必要があるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

別居をするベストなタイミングはいつですか?

別居の準備が整ったときが、ベストなタイミングといえます。

ただし、DVなどの被害が深刻な場合や、子どもへの虐待がある場合は、タイミングをうかがう必要はありません。
ひとまず配偶者と物理的な距離を置き、安全を確保したうえで、別居や離婚の準備を整えましょう。

まとめ

離婚前に一定期間の別居をすることで、裁判において離婚が認められやすくなります。そのため、配偶者がまったく離婚に応じない場合には、別居を検討するとよいでしょう。

一方で、同居中に比べて経済的な負担が増え、離婚の証拠集めなどが難しくなってしまいます。
そのため、事前にきちんと準備をしてから、配偶者と別居について話し合いましょう。

なお、別居中の生活費は、配偶者に婚姻費用として請求できる可能性もあります。
婚姻費用は、夫婦の収入や子どもの人数・年齢などさまざまな事情を考慮して請求する必要があるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

アディーレ法律事務所では、離婚に関する知識や経験を有する弁護士がご相談を承っております。離婚や婚姻費用分担請求についてお悩みであれば、お気軽にご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

離婚、浮気・不倫の慰謝料に
関するご相談はアディーレへ!
離婚、浮気・不倫の慰謝料に関するご相談はアディーレへ!
  • 費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
  • ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。全国65拠点以上。(※1)