離婚するために別居期間は何年必要?平均期間や別居せず離婚する方法を解説
- 公開日:2023年12月25日
- 更新日:2024年11月29日
配偶者がなかなか離婚に応じてくれない場合、別居することで離婚できる可能性があります。
では、何年別居すれば離婚できるのでしょうか?
実際には、別居してから1年未満で離婚を成立させている方も多いです。
ただし、離婚の方法や具体的な状況によっても必要な別居期間は異なります。
そこでこのコラムでは、離婚するために必要な別居期間を離婚方法やケース別に解説します。
なるべく離婚裁判をせずに離婚するための方法や、覚えておくべきポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
この記事を読んでわかること
別居してから何年で離婚する夫婦が多い?
厚生労働省の統計によると、2020年度に別居を経て離婚した夫婦の80%以上は1年未満の別居期間で離婚しています。別居期間の割合構成は、以下のとおりです。
別居期間の割合
5年以上にわたる長い別居期間を経て離婚した夫婦はわずか5.5%にとどまります。別居後に離婚した夫婦のほとんどは5年未満の別居期間で離婚が成立しているようです。
離婚方法によっても別居期間は異なる
全体で見ると1年未満の別居で離婚している夫婦も多いことから、「別居したらすぐに離婚できる」と思われる方も多いかもしれません。
ただし、離婚方法によっても別居期間は異なります。以下で詳しく見ていきましょう。
協議離婚の別居期間
裁判所の手続を利用しない協議離婚の場合、別居期間は1年未満であることが多いといえるでしょう。
厚生労働省の統計によると、離婚した夫婦のうちの88.3%は協議離婚で離婚しています。
つまり、別居期間が1年未満の方の多くは、協議離婚をしていると推測されるのです。
調停離婚の別居期間
裁判所の手続を利用した調停離婚の場合、別居期間は1年を超えるケースも多くなります。
離婚調停では、夫婦がお互いに合意すれば離婚することが可能です。しかし、調停の申立てをしてから調停離婚が成立するまで、通常は6ヵ月程度かかります。
そのため、別居してから離婚するまでの期間が協議離婚より長くなってしまうことも多いです。
裁判離婚の別居期間
厚生労働省の統計によると、2020年度に裁判離婚が成立した夫婦の別居期間は1年未満が58.8%、1~5年未満が34.1%となっています。
そのため、裁判離婚の場合、別居期間は1~5年程度であることが多いといえるでしょう。
離婚調停で合意できないときは、最終的に裁判による離婚を目指すことになります。裁判離婚を成立させるには、裁判官に離婚を認めてもらわなければなりません。
そのためには、少なくとも「婚姻関係が破綻している(夫婦の関係が修復しそうにない)」という要件を満たす必要があります。
このとき、別居期間が長いほど、「婚姻関係が破綻している」と認められやすくなるのです。そのため、協議離婚や調停離婚よりも長い年数の別居期間が必要になります。
ケース別の裁判離婚に必要な別居期間
裁判離婚においては、具体的な事情によって離婚に必要な別居期間が異なります。以下でケース別に詳しく見ていきましょう。
配偶者に「有責行為」があるケース
離婚請求の相手方となる配偶者に不倫(不貞行為)や継続的な暴力行為といった「有責行為(婚姻関係を破綻させる行為)」があった場合、別居期間が1年未満でも離婚が認められることもあります。
ただし、不貞行為の期間や回数、暴力の程度や期間、ケガの程度など、具体的な状況によって異なります。
なお、裁判で有責行為を認めてもらうためには、不倫や暴力行為があった証拠を裁判所に提出して証明しなければなりません。
離婚理由が「性格の不一致」であるケース
性格の不一致を理由に離婚したい場合、基本的には3年~5年程度の別居期間があれば、離婚が認められやすくなります。
「性格が合わない」というだけでは「婚姻関係が破綻している」とまではいえないため、ほかの離婚原因があるケースよりも長い別居期間が必要になるのです。
あなたに「有責行為」があるケース
離婚を請求する側であるあなたに不倫(不貞行為)や暴力行為といった「有責行為」があった場合、別居期間が5年以上であっても離婚が認められないことも少なくありません。
このようなケースでは通常、別居期間のほかにさまざまな事情を考慮したうえで離婚の可否が判断されるためです。
裁判例のなかには、20年間別居していても有責配偶者からの離婚請求が認められなかった事案もあります(東京高裁平成9年2月20日判決)。
他方で、8年弱の別居期間を経て、有責配偶者からの離婚請求が認められた事案もあります(最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決)。
このように、具体的な事情によって、離婚に必要な別居期間は大きく変わります。
離婚裁判をせずに離婚するための方法
協議離婚や調停離婚と比べ、裁判離婚ではより長い別居期間が必要になるケースもあることから、「なるべく裁判をせずに離婚したい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、以下では裁判をせずに離婚するための方法を解説します。
別居中の生活費(婚姻費用)を請求する
別居中は、基本的に収入の少ないほうの配偶者から収入の多いほうの配偶者に対し、生活費(婚姻費用)を請求することが可能です。
収入の多いほうの配偶者が離婚を拒んでいるようなケースでは、婚姻費用を請求することで離婚に応じてもらえることがあります。
婚姻費用の請求が認められた場合、離婚が成立するまでは生活費を負担し続けなければなりません。そのため、「この負担が続くのは嫌だな」と考え、離婚に応じるようになる可能性があるのです。
婚姻費用は、まずは話合いで請求し、話合いでまとまらなければ調停や審判で請求することになります。調停や審判では、夫婦それぞれが同居している子どもの人数・年齢のほか、夫婦双方の収入のバランスなども考慮して婚姻費用の金額が決まるため、相手方の収入がわかる資料を集めておきましょう。
なお、婚姻費用を請求するのが有責配偶者の場合、支払ってもらえるのは未成熟子の生活費のみとなる可能性があります。有責配偶者の生活費は支払ってもらえないこともあります。
離婚調停を申し立てる
夫婦間の話合いでは離婚に合意できなくても、離婚調停を申し立てることで相手が離婚に応じることがあります。離婚調停では、調停委員という第三者が介入し、夫婦それぞれの話を聞いて調整をしてくれるからです。
ただし、調停委員はあくまで中立の立場であり、必ずしもあなたの味方をしてくれるとは限りません。あなたが離婚したいと思っていても、調停委員から「婚姻関係を継続してはどうか」と説得を受けるケースもあります。
そのため調停を申し立てる場合には、自分の意見を法的に理路整然と主張できるようにしておきましょう。
弁護士に離婚の交渉を任せる
夫婦間で直接話し合うと、感情的になり離婚の話が進展せず、なかなか離婚できないケースもあります。そのため、弁護士に依頼し交渉を任せるのも一つの手段です。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットもあります。
- 協議離婚できる可能性が高まる
- 適正な婚姻費用を請求できる可能性がある
- 交渉のストレスが軽減される
離婚問題に詳しい弁護士であれば、経験やノウハウに基づき粘り強く交渉できるため、配偶者が協議離婚に応じてくれるようになるケースも少なくありません。
また、配偶者の収入が正確にわからず婚姻費用の請求に支障が生じている場合にも、弁護士会照会という職権を利用して配偶者の収入を把握し、適正な婚姻費用を請求できる可能性があります。
何より、負担やストレスを軽減し、スムーズに離婚を進めることができるでしょう。
離婚のための別居期間について覚えておくべきポイント
離婚のための別居期間については、以下のポイントも覚えておくとよいでしょう。
離婚に必要な別居期間は同居期間との対比で決まる
離婚に必要な別居期間は、同居期間との対比で決まります。
そのため、別居期間の長さだけで一律に離婚できるかどうか判断できるわけではない点には注意が必要です。
たとえば、結婚後の同居期間が1年しかない場合、別居期間が10ヵ月であっても婚姻関係が破綻していると判断されることもあります。
他方で、結婚後の同居期間が30年で、別居期間が3年である場合は、「一時的な別居にすぎない」として婚姻関係が破綻しているとはいえないと判断される可能性もあるのです。
単身赴任は別居期間に含まれない
別居期間を離婚原因として主張するには、「婚姻関係が破綻している」ことが必要です。
そのため、単身赴任などで単に一緒に暮らしていないだけでは、基本的には婚姻関係が破綻しているとはいえず、「別居期間」には含まれないと考えられます。
ただし、以下のようなケースでは、離婚のための「別居期間」にカウントされる可能性はあるでしょう。
- 離婚を前提に同居を拒否し、結果的に単身赴任することになったケース
- 単身赴任中に夫婦関係が悪化したケース など
なお、単身赴任中に夫婦関係が悪化したケースでは、いつから「別居期間」とするか争いになることも少なくありません。
まとめ
離婚に必要な別居期間は、離婚方法や具体的な状況によってさまざまです。
離婚裁判に発展すると、長期にわたり別居期間が必要になる場合もあるため、話合いや調停で離婚に合意することが一日も早い離婚に繋がります。
しかし、夫婦間で直接話し合うと、なかなか話が進展しないケースも少なくありません。
そのため、弁護士に依頼し交渉を任せることをおすすめします。
アディーレ法律事務所には、離婚問題に関する経験やノウハウをもつ離婚専属チームがあります。離婚がスムーズに進むようサポートいたしますので、まずは一度ご相談ください(※)。
※ケースにより、ご相談を承れない場合もございます。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。