面会交流のルールの例は?頻度・場所・時間など具体的な取り決め方を解説
- 公開日:2023年12月25日
- 更新日:2024年12月25日
面会交流は、離婚後に子どもが両親からの愛情を感じるためにも、とても重要な意味を持ちます。
面会交流をより円滑に行うためには、子どものことを第一に考え、適切にルールを決めておくことが大切です。
ですが、「具体的にどのようなルールを取り決めればいいのかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこでこのコラムでは、面会交流のルールの例や、取決めの方法・ポイント、取決め後にルールが守られないときの対処法を解説します。
離婚後にスムーズな面会交流を行うためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
この記事を読んでわかること
面会交流とは?
面会交流とは、婚姻中の別居や離婚により子どもと離れて暮らす親(非監護親)が、子どもと会ったり、電話や手紙などで交流したりすることです。
面会交流は、基本的には子どもが成人するまで(2022年の改正民法施行後は18歳まで)行われます。
子どもの成人後は、子どもと同居して養育していた親(監護親)の意向に関係なく、子どもの意思で自由に離れて暮らす親と会うことが可能です。
面会交流のルールの例
面会交流についてどこまで細かくルールを決めるべきかは、父母の関係や状況により異なります。
しかし、無用なトラブルを防ぎ、より円滑に面会交流を行うためには、明確にルールを決めておくと安心です。
たとえば、以下のようなルールを取り決めておくとよいでしょう。
- 面会交流の頻度
- 面会交流の場所
- 面会交流の時間
- 子どもの引渡し方法
- 具体的な交流方法
- 学校行事への参加の可否
- 面会交流に関する連絡方法
それぞれ詳しく解説します。
面会交流の頻度
面会交流の頻度は、「月に1回」、「週に1回」などと決めます。子どもの年齢や都合に配慮したうえで、無理のない頻度を決めましょう。
なお、一般的な面会交流の頻度は月1回程度であることが多いといえます。
司法統計によると、調停・審判で取り決められた面会交流の回数・割合は以下のとおりです。
面会交流の回数・割合
参考:令和5年 司法統計年報(家事編)『「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち面会交流の取決め有りの件数 面会交流の回数等別』
※%=小数点第二位以下四捨五入
面会交流の場所
面会交流の場所は、非監護親に任せることもできますが、事前に決めておくこともできます。
たとえば、公園やレストランなどの公共施設や、非監護親の自宅などが候補として挙げられるでしょう。
子どもが幼い場合や、子どもの教育上好ましくない場所を避けたい場合には、事前に特定の場所を指定しておくと安心です。
面会交流の時間
面会交流の時間は、「第1●曜日の○時~○時」、「○時間」などと取り決めます。
子どもの引渡しをスムーズに行うためには、開始時刻と終了時刻を決めておくのがおすすめです。
なお、子どもが幼い場合、長時間の面会交流は負担になってしまう可能性があります。
状況に応じて最初は短時間の実施にするなど、柔軟に取り決めることも検討しましょう。
宿泊の有無
宿泊を伴う面会交流を行うかどうか取り決めることも可能です。
子どもが幼い場合などには、「○歳に達したあと宿泊を伴う面会交流を認める」などと条件を付けることもできます。
なお、ほとんどの家庭では「宿泊なし」で面会交流が行われています。
司法統計によると、一定の調停・審判で取り決められた面会交流に伴う宿泊の有無の割合は以下のとおりです。
面会交流に伴う宿泊の有無の割合
参考:令和5年 司法統計年報(家事編)『「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち面会交流の取決め有りの件数 面会交流の回数等別』
※%=小数点第二位以下四捨五入
子どもの引渡し方法
面会交流の開始時・終了時に、どこでどのように子どもを引き渡すか決めておくとよりスムーズです。
たとえば、「監護親が○○駅の改札に連れて行く」、「非監護親が家まで迎えに来る」などの方法が考えられます。
具体的な交流方法
以下のように、非監護親と子どもの交流方法について細かくルールを定めることも可能です。
- 子どもにプレゼントやお小遣いを渡すことの可否
- 子どもと電話やメール、手紙などでやり取りすることの可否
- 非監護親以外に祖父母などが面会交流することの可否 など
特に、面会交流のたびに高価なプレゼントや高額なお小遣いを与えることは、子どもの成長にとって好ましい行為ではありません。
たとえば、「お小遣いを渡す場合は○○円まで」、「プレゼントを渡すのはイベントのときのみ」などと決めておくと安心でしょう。
学校行事への参加の可否
運動会や授業参観などの学校行事に、非監護親の参加を認めるかどうか決めておくこともできます。
参加を認める場合にはトラブルを防ぐためにも、参加してよい学校行事や、監護親からの事前連絡の有無ついても決めておくとよいでしょう。
面会交流に関する連絡方法
面会交流を行うにあたり、父母がどのように連絡を取るか決めておくと安心です。
たとえば、以下のような内容を決めておくとよいでしょう。
- 電話、メール、LINEなど、連絡手段はどうするか
- 日時変更の必要がある場合、何日前までに連絡するか など
なお、父母間で連絡を取り合うことを避けたい場合には、自治体や民間団体が運営する第三者機関に依頼して面会交流の連絡や調整をしてもらうことも可能です。
面会交流について取り決める方法
面会交流について取り決める際は、まず父母間で面会交流の可否やルールに関する話合いをします。
話合いで合意できた場合は、あとで揉めないように合意内容を書面に残しておきましょう。
話合いで合意できない場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員という第三者を介して話合いをします。調停でも合意ができなければ、自動的に審判に移り、裁判所が双方の主張や証拠に基づき面会交流の可否や内容について判断します。
なお、面会交流は、子どもが幸せに生きられるよう、福祉のために行われるものです。
そのため調停や審判では、主に以下の事情が考慮されます。
- 子どもの年齢・性別
- 子どもの性格
- 子どもの生活環境
- 面会交流による子どもへの影響
このほか、子どもの年齢が10歳程度になると、子どもの意向が考慮されることも多いです。
面会交流のルールの取決めに関する3つのポイント
面会交流の取決めについて、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
子どもの負担を考慮してルールを決める
面会交流では子どもの福祉が最優先されます。そのため、面会交流が子どもにとって負担になりすぎないようにルールを決めましょう。
たとえば、子どもに部活や友達との約束などの予定があるにもかかわらず、「毎日18時に必ず面会交流をする」などと決めてしまうと、大きな負担となってしまうおそれがあります。
子どもの都合や生活サイクルも考慮して、ルールを決めることが大切です。
面会交流のルールは具体的に取り決める
面会交流のルールは、できるだけ具体的に取り決めておきましょう。
ルールを曖昧にしてしまうと、あとで父母間のトラブルになるおそれがあります。
また、面会交流の合意が守られない場合に、特定不十分として法的手続(間接強制)をとれなくなるおそれもあるため注意が必要です。
法的手続をとるためには、最低でも以下の点について取り決めておく必要があるとされています。
- 面会交流の日時または頻度
- 各回の面会交流の時間の長さ
- 子どもの引渡し方法
面会交流のルールはあとで変更できる
子どもが成長するにつれて状況が変化すると、面会交流のルールを変えたほうがよいケースも出てきます。
そのような場合には、ルールを取り決め直すことが可能です。
面会交流のルールを変更する際は、まずは父母間で話し合います。話合いで合意できなければ、必要に応じて家庭裁判所の調停・審判の手続を利用しましょう。
面会交流のルールが守られないときの対処法
相手がちょっとしたルール違反をした場合には、口頭やメールなどで注意をしてみましょう。改めて認識を合わせることで、その後の面会交流が円滑に行えるかもしれません。
場合によっては、当初とは家庭や仕事の事情が変わり取り決めたルールを守れなくなっている可能性もあります。その際は、状況に合わせてルールを変更することも検討しましょう。
なお、面会交流について取り決めたにもかかわらず、監護親が正当な理由なく面会交流を拒否する場合には、以下のような方法をとることも考えられます。
- 面会交流調停の申立て
- 履行勧告の申立て
- 間接強制の申立て
- 慰謝料の請求
それぞれ詳しく見ていきましょう。
面会交流調停の申立て
面会交流について、父母間の話合いだけで取決めた場合には、裁判所に調停を申し立てましょう。
調停で合意できない場合には、審判へ移行し裁判所が判断をしてくれます。
調停や審判でより明確にルールを定めることで、その後の面会交流が円滑に行える可能性が高まるはずです。
また、調停や審判による取決めをしておけば、面会交流に応じてもらえない場合に法的手続をとることもできるようになります。
履行勧告の申立て
調停または審判で面会交流の取決めをした場合には、裁判所から「履行勧告」を発してもらうことができます。
履行勧告とは、家庭裁判所から相手方に対して、調停または審判で取決めた内容を守るよう伝えてもらう手続です。
履行勧告に強制力はありませんが、相手にプレッシャーを与えることができるため、面会交流に応じてもらえる可能性が高まります。
費用がかからず口頭での申立ても受け付けてもらえる簡単な手続であるため、まずは利用を検討してみるとよいでしょう。
間接強制の申立て
調停または審判で面会交流の取決めをした場合には、「間接強制」という法的手続をとることもできます。
間接強制とは、約束に応じない監護親に対し、約束に応じるまで金銭(間接強制金)の支払義務を課す手続です。
たとえば、裁判所から「面会交流に応じない場合には1回につき○万円を支払うように」と命令を出してもらうことで、面会交流の実施を促すことができます。
ただし、間接強制が認められるためには、面会交流の合意内容が具体的でなければなりません。
たとえば、最高裁の判例では、以下のような取決め内容は特定性を欠くとして、間接強制が認められませんでした(最高裁平成25年3月28日 第一小法廷決定)。
項目 | 内容 |
---|---|
面会交流の頻度 | 2ヵ月に1回程度 |
各回の面会交流の時間の長さ | 半日程度(原則として午前11時から午後5時まで) ただし、最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする |
面接交流の日時・場所・方法 | 子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間(両親間)で協議して定める |
参考:裁判所『平成24年(許)第47号 間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定 に対する許可抗告事件 平成25年3月25日 第一小法廷決定』
なお、間接強制が認められたとしても、監護親が応じなければ面会交流は実施できません。
慰謝料の請求
面会交流に不当に応じない監護親に対しては、慰謝料を請求するのも手段の一つです。
面会交流を拒否されたことで負った精神的苦痛に対する賠償金を、慰謝料として請求できる可能性があります。
ただし、慰謝料請求が認められる可能性があるのは、具体的な取決めがあり、面会交流の拒否が悪質かつ違法性のあるケースに限られます。
また、慰謝料請求が認められたとしても、監護親が面会交流に応じなければ、面会交流は実施できません。
まとめ
面会交流を円滑に行い無用なトラブルを防ぐためには、ルールを決めておくことが大切です。
面会交流を行う頻度や場所、時間、子どもの引渡し方法などについて、具体的に取り決めておきましょう。
面会交流の取決めをするうえでは、交渉が難航することも少なくありません。場合によっては調停・審判など家庭裁判所の手続が必要なケースもあります。
そのため、ご自身で取決めを行うのが不安な場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
アディーレ法律事務所には、離婚問題について経験豊富な弁護士が在籍しております。
離婚に際し、「面会交流のルールを適切に取り決めたい」とお考えであれば、ぜひ一度ご相談ください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。