弁護士コラム

別居中の生活費は請求できる!婚姻費用の金額の相場や期間、請求方法を解説

別居中の生活費は請求できる!婚姻費用の金額の相場や期間、請求方法を解説
  • 公開日:2025年1月22日
  • 更新日:2025年02月06日

別居中の方や別居を考えている方のなかには、「自分のお金だけでは暮らしていけない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、安心してください。あなたの収入が配偶者より低い場合や、お子さまがいる場合、配偶者に対し別居中の生活費を請求できる可能性があります。

このコラムでは、別居中に請求できる生活費の範囲や金額、支払ってもらえる期間、請求方法などを解説します。
別居後に安心して暮らしていくためにも、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を読んでわかること

  1. 別居中の生活費に関する基礎知識
  2. 別居中の生活費を請求する方法
  3. 別居中の生活費を請求できるか不安な場合の対処法

別居中の生活費は夫婦で分担する義務がある

夫婦には、お互いに相手が自分と同等の生活を送れるよう助け合う義務(生活保持義務)があります。
さらに夫婦は、それぞれの資産や収入等に応じて生活費を分担する義務(婚姻費用の分担義務)を負っています。

これらの義務は、法律上の夫婦である以上、別居をしてもなくなりません。

そのため、夫婦のうち収入が少ないほうの配偶者や、子どもと暮らしている配偶者は、もう一方の配偶者に対し別居中の生活費(婚姻費用)を請求できます。

別居中に請求できる生活費の範囲

婚姻費用として請求できるのは、生活にかかる費用のうち以下のような費用です。

  • 住居費
  • 光熱費
  • 食費
  • 被服費
  • 出産費
  • 医療費
  • 子どもの養育費・教育費
  • 常識の範囲の交際費・娯楽費 など

このように、生活に必要なほとんどの費用は婚姻費用として請求できます。

別居中の生活費として請求できる金額

婚姻費用の金額は以下の事情を考慮して決まるため、一概に「相場はいくら」とはいえません。

  • 婚姻費用を支払う側の年収
  • 婚姻費用を受け取る側の年収
  • 子どもの人数
  • 子どもの年齢 など

一般的には、これらの要素を裁判所が作成した「婚姻費用算定表」に照らし合わせて決めることが多いです。
以下の「婚姻費用かんたん自動計算ツール」でも婚姻費用の目安を算出できるため、参考にしてみてください。

別居中の生活費が支払われる期間

婚姻費用は、原則として「請求したとき」から「婚姻費用の分担義務がなくなるとき」まで支払われることになります。
婚姻費用の分担義務がなくなるときとは、「離婚」または「再び同居」するまでと考えるのが一般的です。離婚したあとは婚姻費用の分担義務がなくなるため、婚姻費用を請求することはできません。

なお、婚姻費用の支払義務は「請求したとき」から生じるため、基本的には過去にもらえるはずだった婚姻費用をあとになって請求するのは難しいといえます。
別居後に配偶者が婚姻費用を支払ってくれない場合は、できるだけ早く婚姻費用分担請求をするべきでしょう。

別居中の生活費を請求できる配偶者

婚姻費用は、基本的には収入が少ないほうの配偶者から、収入が多いほうの配偶者に対して請求します。専業主婦(主夫)の方はもちろん、共働きであっても請求可能です。
別居先で未成熟の子どもと一緒に暮らしているケースでは、夫婦の収入が同程度または相手より収入が高くても、婚姻費用を請求できることもあります。

一方で、たとえばあなたが夫婦関係を破綻させた「有責配偶者」にあたる場合、婚姻費用の分担請求ができない場合はあります。

ただし、婚姻費用の分担請求ができない「有責配偶者」だったとしても、経済的・社会的に自立していない子どもを引き取った場合には、婚姻費用のうち養育費(子どもの生活費・教育費にあたる部分)は請求することが可能です。

別居中の生活費を請求する方法

婚姻費用は、夫婦間の話合い、または家庭裁判所を通した手続である婚姻費用分担請求調停・審判のなかで請求します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

夫婦間の話合い

まずは、夫婦で話し合いましょう。お互いが合意すれば金額や支払方法は自由に決められますが、婚姻費用算定表を参考に「月額○○円」と取り決めるのが一般的です。

話合いで合意できたら、合意内容を書面に残し、執行受諾文言を付けた公正証書として作成しておくことをおすすめします。

公正証書とは、公証人が作成した証明力が非常に高い文書のことです。
執行受諾文言(「約束を守らない場合には強制執行を受けても異議はない」という条項)を付けて公正証書を作成しておけば、婚姻費用が支払われなかった場合に、相手の財産や給料などを差し押さえることができます。
そのため、別居が長期化する場合にも、安心して生活費を受け取ることができるでしょう。

婚姻費用分担請求調停・審判

夫婦間の話合いで合意できない場合や、話合い自体ができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立て、調停委員を介して話合いを行います。
調停でも合意できなければ、自動的に審判へ移行し、裁判所に判断してもらうことになります。

調停や審判で婚姻費用を取り決めた場合は、調停調書または審判書が作成されます。
これらの文書は法的な強制力を持つため、婚姻費用が支払われなかった場合には裁判所に申し出ることで、履行勧告や強制執行といった法的手続をとることが可能です。

別居中の生活費を請求できるか不安なら弁護士にご相談を

婚姻費用を請求するためには、適切な金額を算出し交渉を行う必要があります。
ご自身で適切に婚姻費用を請求できるか不安があれば、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士であれば、法的な知見や交渉ノウハウを生かし、適切に婚姻費用を請求できます。
配偶者が請求にまったく応じてくれないケースなどでも、弁護士が介入することでスムーズに話合いを進められる可能性が高まるでしょう。
また、書面の作成や、調停・審判の対応なども任せられるため安心です。

適切な婚姻費用をできるだけ早く取決め、別居中に安定した生活を送るためにも、まずは弁護士にご相談ください。

別居中の生活費についてよくある質問

別居中の生活費について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。

DVから避難している場合も生活費を請求できますか?

DVの加害者である配偶者より収入が少ない場合や、子どもを連れて避難している場合には、婚姻費用として生活費を請求できます。

ただし、あなたがDVをしてくる相手と直接話し合うのは現実的ではありません。そのため、弁護士への依頼や、婚姻費用分担請求調停(審判)の申立ても検討すべきでしょう。

別居して実家に住んでいる場合も生活費を請求できますか?

別居をして実家の家族に居住費や光熱費などを負担してもらっているケースでも、基本的には標準的な住居費・生活費を含めた金額を請求できるとされています。
これは、実家から受けた支援は家族からの贈与であると考えられており、婚姻費用の算定に影響する要素ではないためです。

住宅ローンは別居中の生活費を請求する際に影響しますか?

住宅ローンが婚姻費用に影響するかどうかは、住宅ローンの負担者や夫婦のどちらが住宅ローンの残っている自宅に住むかなどによって変わります。

たとえば、あなたが住宅ローンを支払っており、配偶者が自宅に住み続ける場合には、標準的な婚姻費用に上乗せして請求することも検討すべきでしょう。
一方で、配偶者が住宅ローンを支払っており、あなたが自宅に住み続ける場合には、配偶者の負担を考慮して婚姻費用を算定することになります。

まとめ

夫婦には、法律上の婚姻関係がある以上、別居していても生活費を分担する義務があります。
あなたの収入が配偶者より少ない場合や、子連れで別居する場合には、生活費を支払ってもらうよう請求しましょう。

婚姻費用は、原則として「請求したとき」から認められるため、別居することが決まったらできるだけ早く請求することが大切です。

アディーレ法律事務所では、別居中の生活費を請求したいという方からのご相談を承っております。
「適正な金額がわからない」、「うまく交渉できるか不安」とお悩みであれば、まずは一度ご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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